「アジアのコーヒーです」と名乗ると、今でもときどきこう返される。「ブレンド用ですか」。悪意はない。長い間、アジアの豆は「安価な原料」として世界の胃袋を満たしてきた。その歴史は事実だ。しかしその時代は、いま確実に終わりつつある。当事者の一人として、その変化を書く。
アジアはコーヒーの小国ではない。ベトナムは世界第2位の生産国で、輸出額は年間約80億ドル規模に達する。インドネシアも世界有数の生産国だ。ラオスも地域第3位の生産国で、コーヒー産業は年2億ドル超を生み、約2万5千世帯を支えている(2026年のコーヒーフェスティバルでの公式発表)。
それでも「安価な原料」扱いが続いたのは、供給の中身がロブスタ中心で、行き先がインスタントや大手ブレンドだったからだ。量と価格だけで評価される市場では、丁寧に作る理由が生まれにくい。評価の仕組みそのものが、品質への投資を阻んでいた。
変化は三つ重なって起きている。
第一に、評価軸の移動。世界のスペシャルティ市場の評価は「どこで採れたか(産地のブランド)」から「どう作られたか(精製・発酵・記録)」へ移っている。作り方で勝負できるなら、歴史ある産地と新しい産地の差は縮まる。実際、ラオスのロットがスペシャルティオークションで高値をつけ始め、アラビカ・スペシャルティ比率は年々上がっている。
第二に、アジア自身が飲み始めた。ベトナムの若い世代のカフェ文化、マレーシアやタイのスペシャルティシーン。生産地が同時に消費市場になると、「輸出用の安い豆」と「自分たちが飲む良い豆」の区別が消えていく。ラオスでブリュワーズの世界大会出場選手が生まれたのも、この流れの中にある。
第三に、供給不安の時代。二大産地の気候リスクが顕在化した今、買い手は調達先の分散を真剣に考え始めている。新しい産地にとって、扉は開きやすくなっている。
私たちのミッションは、「安価な原料」として扱われてきたアジアの産地の価値を、実務の知見とデータで世界に問うことだ。精神論ではない。評価軸が「どう作られたか」に移った以上、作り方を数字で証明できる産地が勝つ。だから全ロットを測り、記録し、公開する。ラオスで磨いた精製の知見を、国境を越えて共有する。
安価な原料の時代が終わるということは、アジアの生産者が初めて、価格ではなく価値で選ばれる土俯に立てるということだ。その土壌で戦う準備を、私たちは10年かけてしてきた。
ロブスタ中心の大量生産と、インスタント・ブレンド向けの供給構造が長く続いたためです。品質ではなく量と価格で評価される市場に組み込まれていました。
スペシャルティ比率の上昇、域内消費市場の成長、精製技術の進化、そして評価軸が「どこで採れたか」から「どう作られたか」へ移ったことです。作り方で勝負できるなら、産地の知名度の差は縮まります。
スペシャルティオークションで高値がつくロットも出始め、アラビカ・スペシャルティ比率は年々上昇しています。生産量ではなく品質と物語で選ばれる産地になりつつあります。
評価軸の移動の話は「どこで採れたか」から「どう作られたか」へ、ラオス初の世界大会出場はORIGAMI CUP Laos 2026レポート、国を越える取り組みは国を越えて品質を作るへ。
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