FIELD LOG
2026.03.23

水分値の測定と意味|なぜ全ロットで測るのか

文・Masa
LAOS

水分値という数字を、私は「焙煎士への手紙」だと思っている。この豆は、ここまで乾かしました。だからこう焼いてください、という一通の便りだ。Data Bankで測る数字の中でも、水分値はいちばん実務に近い。乾燥の終点であり、そのまま焙煎へ渡す最重要データでもある。この記事は「水分値をどう測り、どう読むか」に絞る。乾燥の止めどきの科学は乾燥の科学、似て非なる指標は水分活性という指標へ。

水分値は「乾燥の終点」

水分値は、豆にどれだけ水が残っているかの割合だ。おおむね10〜12%まで落とす。高すぎればカビや劣化が進み、低すぎれば豆が痩せて味が薄くなる。乾燥をどこで止めるかは、この数字で決める。指先や見た目の「乾いた感じ」ではなく、測って決めるのが基本だ。手紙にうそは書けないから、必ず測る。

乾燥棚に広げたパーチメント
乾燥の終盤。ここからは、乾いた感じではなく数字で終点を決める。

どう測るか(研究の話)

水分値の基準になる測り方は、豆を規定温度で長時間乾かして減った重さから求める乾燥減量法で、16時間ほどかかる。現場で使う携帯式の水分計や近赤外(NIR)は、この基準法に対して校正されて初めて意味を持つ。NIRは数分・非破壊で予測でき、基準法との一致度(決定係数R²)は0.97〜0.98と高い(Adnan et al., Foods 2017)。つまり道具は何でもよいが、同じ道具を同じ手順で、基準法との対応を確かめたうえで使い続けることが、翌年と比べられる条件になる。

もう一つ大事なのは、どこを測るかだ。乾燥棚の表面と底、棚の端と中央では水分が違う。一点だけ測って「11%」と書くと、手紙にうそが混じる。何点か採ってばらつきを見る。ばらつきが大きいなら、まだ天地返しが足りない。

揃っていないと、手紙が読めない

水分値は「焙煎へ渡す数字」でもある。同じ研究は、同じ焙煎温度・同じ時間でも、水分値が違えば色・密度・アロマが変わることも示している。だから水分値を揃えることが、一定した焙煎の条件になる(Adnan et al., 2017)。私たちは「平均で11%」ではなく「みんなが11%前後」を目指す。ロットの中でばらつくと、手紙の文字がぶれて、焙煎士が同じ豆でも安定して焼けなくなる。

乾燥の答えであり、手紙

乾燥の終盤に水分値を繰り返し測り、目安に入ったところで止める。ロットの中で揃うように、天地返しを欠かさない。水分値は、乾燥の答えであり、焙煎士への手紙でもある。

実際のロットの数値はDATA BANKに一覧にしている。数値で管理する全体像はData Bankとは何か、焙煎士にまず渡したい数字の並びは収穫でロットに残す記録項目へ。

参考文献

  • Adnan A., von Hörsten D., Pawelzik E., Mörlein D. (2017). Rapid prediction of moisture content in intact green coffee beans using near infrared spectroscopy. Foods 6(5):38. 10.3390/foods6050038
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