「このチェリー、Brixが高いから、きっと甘い豆になる」。私もそう信じて疑わなかった。糖度が高い実は、甘いコーヒーになる。直感的にも正しそう。ところが、測って記録し、研究を並べてみると、この思い込みは崩れた。Brixは、そのまま「豆の甘さ」ではない。今日は、Brixが本当は何を測っているのかを書く。
「チェリーが甘いほど、甘い豆になる」は、研究で覆された。チェリーが熟すると果皮や果汁のスクロース(糖)はほぼ倍増する。ところが、その糖は豆(種子)にはほとんど移らず、豆の糖は成熟を通じてほぼ一定である(Baptistella et al., Plants 2024)。しっかり熟した実の中で色の進みを比べても、カップ点に意味のある差は出なかった。つまり、果肉がどれだけ甘くても、それが直接「甘い豆」を意味するわけではない。果肉の甘さと、コーヒーの甘さは、別の場所の話だ。
覆されたからといって、Brixが役立たずなわけではない。Brixは「実の熟れ具合」と「発酵の進み」を読む物差しとして役に立つ。収穫では、チェリーが十分に熟しているかの目安になる。発酵では、微生物が糖を食べるほどBrixが下がるので、どこまで進んだかが分かる。飲料側の理化学では、可溶性固形分(Brix)が官能スコアと正の相関を示す例もある(Vega et al., ACS Omega 2025)。だからBrixは「豆の甘さ」ではなく、「プロセスのどの段階か」を教える数字として活かす。
測り始めて考えを改めた。Brixが高いから甘い豆、とは言えない。だからBrixは、収穫の熟度と、発酵の進みを読むために使う。甘さそのものは、精製と乾燥の作り込みで決まる。糖度と微生物の関係性については、他の記事で紹介するつもりだ。
実際のロットの数値はDATA BANKに一覧にしている。数値で管理する全体像はData Bankとは何か、収穫と糖度の話はコーヒーの収穫と選果、発酵の管理は発酵を数値で管理するへ。
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