LAB REPORT
2026.09.06

収穫でロットに残す記録項目|再現できる品質のために

文・Masa

収穫でどれだけ丁寧に選んでも、記録しなければ翌年の自分に渡せない。どう作られたかを数値で語るというのは、来年の自分やパートナー農園が同じ判断を再現できるようにしておくことだ。収穫の段階でロットに何を残すべきか、LuLaLao Farmの実務と研究の裏づけを合わせて一覧にする。

研究データ:何を記録すると後で活きるか

収穫クラスターで見てきた研究は、記録すべき項目を指している。熟度と実の選び分けは品質を左右し、収穫時期(早い・盛り・遅い)でも欠点とカップスコアが動いた(Huang et al., 2025)。生豆の風味を最もよく予測したのは密度と水分だった(Gonzalez-Sanchez et al., 2024)。だから、この二つを含む物性はロットに残す価値がある。

測り方をそろえることも、同じくらい大事だ。近赤外分光を使えば、生豆の水分は、16時間かかる標準乾燥法に代えて数分・非破壊で予測でき(実測値との一致度を示す決定係数R²が0.97〜0.98と高い)、欠点や成分、カッピング評価まである程度は相関する(Adnan et al., 2017; Munyendo et al., 2022)。ただしそれも、標準の参照法で校正して初めて意味を持つ。数字は、同じ手順で同じ校正のもとに取るから、翌年と比べられる。記録の値打ちは、正しく測ってはじめて生まれる。

ロットごとに残すべき項目(収穫段階)

私たちがロットごとに書き留めているのは、次のあたりだ。数値はすべてData Bankの測定値と、目視の推定値に限る。

  • 収穫日と、シーズン内の位置(早い・盛り・遅い)
  • 同じエリア内における摘採の回数
  • 熟度の目安(Brix)と、推定の未熟混入率
  • 浮遊選別のフロート除去率(浮いて除いた割合)
  • 摘採から処理までの時間と、その間の温度・清潔さ
  • 乾燥後の密度(今季から)
  • 欠点の内訳(割れ・黒化・未熟などを分けて数える)
  • 害虫の圧(Antestia など、気づいた範囲で)

Brixが豆の甘さではなく熟度の物差しであることや、密度がなぜ効くかは、Data Bankの考え方に沿っている。数字は、翌年の判断に渡すために取る。

収穫したコーヒーのロットごとに測定値を記録する様子
収穫の判断は、記録して初めて翌年に渡せる。

農園での使い方

記録は、あとで見返すために取る。盛期のロットは高品質の枠に回し、未熟が出やすかった時期のロットは翌年の選別を強める。害虫の圧が高かった区画は、収穫後に対策を始める。記録が、何をすべきか教えてくれる。

今季、収穫段階でロットに残した項目は上の8種類。項目は増やすより、同じ項目を毎年同じ手順で取り続けることを優先する。

勘に見える摘みどきも、書き留めれば来年に渡せる。記録は、未来の自分への手紙だ。
コーヒーのロットごとに測定する手元
ロットごとに、同じ項目を同じ手順で。

各項目の背景は、完熟の見分け(完熟は色より先に来る)、未熟混入(未熟をどう減らすか)、摘採後の待機(摘採後の待機)、木の中のばらつき(なぜ熟度が割れるか)に。全体像は収穫の総説へ。

参考文献

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