摘んだチェリーは、その瞬間から時計が動き出す。精製に入るまでのわずかな待機時間で、品質は静かに動く。LuLaLao Farmで気をつけているのは、涼しく、清潔に、そして短く、の三つである。
摘んだ実は、絶対に日向に山積みにしない。風の通る涼しい場所に薄く広げ、その日のうちに処理へ回す。どうしても待つときも、清潔な容器で、なるべく短く待機させる。積み上げて熱がこもると、中で発酵や傷みが進んでしまうからだ。
収穫の日の小さな手間を惜しむと、あとの工程では取り返せない。発酵はタンクに入れてから始まるのではなく、収穫カゴの中でもう始まっている。そう思って扱うと、扱いは自然と丁寧になる。
なぜ温度がこれほど効くのか。果実は収穫後も呼吸を続けており、その速度は温度で跨ね上がる。果実生理の基本資料では、0℃のときを基準に、4.4℃で約2倍、15.6℃では6倍以上の速さで呼吸・劣化が進むとされている(NC State Extension)。番で温まった実は、摘んだ瞬間から糖を消費し、自分で熱を出しながら老けていく。だから原則は二つになる。涼しい時間帯に採ることと、採った熱を速やかに除くことだ。
待機時間の目安には二段の基準がある。常温で山積みのままなら6〜8時間以内に果肉除去することが推奨されており、それを超えると制御されない発酵が始まる(TechnoServe Wet Mill Processing Guide)。いっぽう、20℃以下で清潔に保てれと48時間まで延ばせるが、それでも欠点豆の割合は、24時間待機の4.42%から48時間待機の6.80%へと増えた(Osorio et al., 2024)。同じ研究では、温度を保てばカップ評価自体は有意に落ちず、むしろ果実系の風味表現が増えたとも報告されている。つまり悪いのは待機そのものではなく、温度と衛生を失った待機だ。
待機が長引くと、味だけでなく安全の問題になる。処理の遅れによって、カビ毒(オクラトキシンA)を作るAspergillus ochraceusが、果肉を取り除いたパーチメントの状態に比べ、果肉のついたチェリーの状態で約2倍に増え、カッピング評価も下がった(Velmourougane et al., 2011)。長く置けば、毒を作るカビが優占していく(Buitrago-Zuluaga et al., 2025)。
ただし、ここでも温度で運命が分かれる。20℃付近では乳酸菌の働きでカビが抑えられ、高温になるとその抑制が弱まった(Lee et al., 2023)。山積みは、まさにその高温を自分で作り出す行為だ。日陰・通気・清潔な容器という地味な三つが、そのままカビ毒の予防になっている。
面白いのは、待機をうまく使えば風味が増えるという点だ。上の研究では、15〜20℃の待機で果実系の表現が増えている。これは、実の中で静かに発酵が始まっているということだ。だから待機は、避けるべきロスではなく、温度と時間で管理する工程の一つと考えたほうが正確だ。もちろん、欠点豆は確実に増えるので、選別を強めるのがセットになる。
だからロットには、摘採から処理までの時間と、その間の温度、清掃したかを記録している。速やかに洗って乾かし、水分活性を下げるところまでをひと続きの精製として扱う。待機の時間と温度は、ロットシートの記入項目に入れた。測っていないものは、改善のしようがないからだ。
常温で山積みなら6〜8時間以内が実務の目安です。20℃以下で清潔に保てれで48時間まではカップ評価が落ちなかったという研究もありますが、欠点豆は徐々に増えます。
中で熱がこもり、狙っていない発酵が勝手に始まるからです。果実は摘んだあとも呼吸しており、温度が上がるほどその速度が跨ね上がります。
必ずしもそうではありません。15〜20℃で清潔な待機はカップを落とさず、果実系の香りが増えたという報告もあります。問題は待機そのものではなく、温度と衛生を失った待機です。
収穫の全体像は収穫と選果、記録の設計は収穫でロットに残す記録項目、乾燥と水分活性は乾燥の科学、熟しすぎのリスクは完熟の上の締め切りへ。
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