コーヒーの木を一本見ると、真っ赤な実の隣に、まだ緑の実や熟しすぎた実が同居している。収穫が一度で終わらない理由はここにある。これは木の調子が悪いからでも、管理を間違えたからでもない。生殖の仕組みそのものである。
アラビカは年に2〜3回開花し、開花から成熟までの窓は180〜330日と広い。しかも花芽は節の上で位置ごとに順番に発達し、順に咲いていく(Unigarro et al., 2025; López et al., 2021)。だから同じ木、同じ枝に、咲いた時期の違う実が並ぶ。赤と緑が同居するのは、この非同調的な開花の当然の結果なのである。
ばらつきの引き金は、ばらついた開花にある。まとまった乾期のあと、まとまった雨が降ると開花が一斉に立ち上がる。ある研究では、11日以上の乾期とその後10mm以上の雨が開花の合図になり、強い開花は雨から8〜10日で立ち上がる(Rendón-Sáenz et al., 2025)。雨が小分けに降ると開花も小分けになり、熟度が割れる。灌潅のある産地の実験では、水を与え続けた場合の完熟果の割合が約40〜48%だったのに対し、開花前にわざと乾期をはさむと、収穫時の完熟果の割合が73〜76%へ上がった(Miranda et al., 2020)。
さらに、同じ木の中の場所でも実り方は違う。日光がよく届く上の枝ほど実がつき、成分に上下の勾配が出る。ただし、しっかり処理すればカップ品質の差は小さく、場所で分けるより熟度で選んで全体から摘めばよい、という報告もある(Rakocevic et al., 2023; DaMatta et al., 2007)。
「木の中で熟度が割れるのは自然なことである。特にLuLaLao Farmの一つがあるラオス南部では、まばらに、だらだら続く雨によって、赤と緑のチェリーが混在し放題。だから一度で採り切ろうとしない。完熟だけを選んで摘み、残りは次のラウンドに回す。乾期のあとにまとまった雨が来た年は開花が揃い、実も揃う(この10年で2回ぐらいしかないけど)。そういう年は摘む回数が少なくて済む。そんなことは滅多にないため、普段から天気を読みながら収穫の段取りを組んでいる。」
「熟度が割れるのは木の仕組みだ。だから選別摘みは、選択肢ではなく前提になる。」
選び分けの実務は未熟をどう減らすか、完熟の見分けは完熟は色より先に来る、どれだけ穫るかの話はたくさん穫るvs良く穫る、全体像は収穫の総説へ。
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