LAB REPORT
2026.07.31

生豆はどう劣化するか|鮮度を守る4つの条件

文・Masa

袋に詰めて、港へ送り出す。ここから豆は、何週間もかけて海を渡る。私はいつも、その長い船旅のことを考えながら乾燥の止めどきを決めている。コーヒーは焙煎してから劣化する、と思われがちだ。でも本当は、その前の生豆の段階から、豆は静かに老いていく。せっかく良い精製と乾燥をしても、この船旅で落とせば台無しになる。今日は、生豆が何によって劣化するのか、鮮度を守るために何を見ているのかを書く。

劣化の主因は「脂質の酸化」

生豆の劣化は、見た目より先に中身で進む。主因は脂質の酸化だ。保存が進むと、酸価・過酸化物価・TBARSといった酸化の指標が上がり、水分と不飽和脂肪酸が減っていく(Chi et al., 2020)。これを速めるのが、温度・水分(水分活性)・酸素・光だ。加速貯蔵試験では、包装によって鮮度の保ちが大きく変わり、バリア性の高いGrainProが、通常のポリ袋(LDPE)や麻袋(PW)より品質を保った。高温ほど酸化は速く進む(Saengrayap et al., 2022)。一方で、麻袋のように通気性のある包装は香り成分を保ちやすい面もあり、密封・真空は酸化と湿気からは守るが、包装ごとに一長一短がある(Storage VOC, 2022)。つまり「どの袋で、どの温度で、どれだけの水分活性で運ぶか」が鮮度を決める。

コーヒー生豆を袋に詰めて出荷準備をする様子
どの袋で運ぶかで、鮮度の保ちが変わる。

鮮度を守る4つの条件

研究が示す劣化の加速要因を裏返すと、守り方は4つになる。低温(酸化と老化を遅らせる)、低水分・低水分活性(カビと酸化の入口を閉じる)、遮光(光による酸化を防ぐ)、そして低酸素・バリア包装(酸素と湿気を遮る)。この4つは、乾燥で作り込んだ状態を「そのまま日本まで届ける」ための条件でもある。乾燥の話は水分値と水分活性が主役だったが、保管・輸送はそれを維持する工程だ。作るだけでなく、守り切る。

送り出すまでが仕事

「乾燥で水分値を揃えたあと、その状態を落とさないことを一番に考えている。バリア性のある袋で酸素と湿気を遮り、できるだけ涼しく、光を避けて保管する。長い船旅を越える豆だからこそ、袋と温度と水分値を毎回そろえて送り出す必要がある。」

「良い精製も乾燥も、最後の保管で落とせば台無しになる。鮮度は、届くまでが勝負だ。」

水分活性そのものの話は水分活性という指標、乾燥で状態を作る話は乾燥の科学、数字で管理する全体像はData Bankとは何かへ。

参考文献

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