嫌気発酵や共発酵のコーヒーを出すと、必ず両方の反応が来る。「この発酵感がたまらない」と「これは発酵臭ではないか」。同じ一杯への正反対の評価。では、個性と欠点の境界はどこにあるのか。嫌気も共発酵も自分たちで仕込む農園として、私たちの線引きを書く。
2026年に出た研究が、この問いに正面から答えている。収穫後の各工程で揮発性成分を追跡した結果、酢酸とエタノールの高値=制御できていない発酵(ビネガー・シャープな欠点)、エステル類(酢酸エチル・酢酸イソアミル)と2-フェニルエタノールの高値=良く管理された発酵(果実・花の香り)と、分岐が化合物で定義された(Molecules, 2026)。「ファンキー」という曖昧な言葉の中身は、実は化学的に分離できる。
時間軸で見ると、境界は崖のように現れる。密閉発酵で時間を振った実験では、72時間で果実感がピークになり、96時間ではハーブのみになった(Palumbo et al., 2024)。良い香りが減って悪い香りが増えるのではなく、ある点を越えると果実側の香りそのものが崩れる。攻める発酵とは、この崖の手前で止まる技術だ。
なお、発酵臭と混同されやすい別物が二つある。薬品様のRio臭(TCA系)と、ポテト臭(IPMP、アフリカ大湖地域特有)。これらは発酵管理とは別の経路で生まれるので、診断を分ける必要がある。
現場での判断は三段構えだ。
仕込みでは、温度を低く保ち、pHと時間を記録する。高温は酢酸菌を優勢にし、ビネガー側への転落を早める。
発酵中は、匂いを毎日確かめる。熟した果実とヨーグルトの匂いは青信号。酢・シンナー・チーズ・玉ねぎの匂いは赤信号だ。
乾燥後は、カッピングで後味を見る。良い発酵は飲み込んだあとに甘さが残り、失敗した発酵は舌の奥にピリつきが残る。
そして、境界線上のロットは商品にしない。辰境界の判断に迷うということは、飲む人の一定数が不快に感じるということだ。迷ったら落とす。このルールだけは曲げない。
正直に書けば、発酵系の香りの好みは分かれる。ワインや発酵食品が好きな人にはたまらなく、クリーンなカップを好む人には余計な香りに感じられる。これは優劣ではなく嗜好だ。ただし嗜好の話と欠点の話を混ぜてはいけない。酢酸過多や酪酸は、好みではなく事故である。
一概には言えません。良管理の発酵が作るエステル系の果実香は個性ですが、酢酸とエタノールの過剰や酪酸による匂いは化学的に定義できる欠点です。境界は化合物で引けます。
酢・シンナーのようなツンとする匂い、チーズや吐瀉物のような匂い(酪酸)、玉ねぎのような匂い(プロピオン酸)が代表的なサインです。熟した果実や花の香りとは区別できます。
あります。薬品様のRio臭(TCA系)と、アフリカ大湖地域特有のポテト臭(IPMP)は発酵管理とは別の経路で生まれる欠点で、発酵を改善しても防げません。
嫌気発酵の仕組みは嫌気性発酵とは、過発酵の酸の話は「いい酸味」と「悪い酸味」は化学的に別物だ、発酵時間の崖は発酵時間と有機酸へ。
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