LAB REPORT
2026.08.04

欠点とオフフレーバーの地図|見える欠点、見えない欠点

Words by Masa

カップに鼻を近づけた瞬間、薬品のような、煙のような匂いが立った。飲まなくても分かる。このロットは、発酵のどこかで何かが起きた。でも私は、この匂いを「失敗」とだけは呼ばない。欠点は、悪者というより「工程の答え合わせ」だからだ。どんな欠点がどこから来るのかが分かれば、来年の精製を直せる。今日は、目で見える欠点と、飲んで初めて分かる欠点を整理して、代表的なオフフレーバーの出どころを地図にする。

欠点は2種類ある。「見える」と「見えない」

欠点は大きく2つに分かれる。ひとつは物理欠点。黒豆、未熟豆、虫食い、割れ、カビ豆など、目で見えるものだ。もうひとつはカップ欠点。見た目は普通でも、飲むと分かる味の欠点で、全体を覆う「テイント」と、致命的な「フォルト」に分けられる。厄介なのは後者だ。選別で弾いた見た目のきれいな豆の中にも、味の欠点は隠れている。冒頭の薬品臭も、豆の見た目はきれいだった。だから最後は試飲(カッピング)でしか捕まらない。

コーヒー生豆から欠点豆をハンドピックする様子
見える欠点は、選別で弾ける。問題は、見えない欠点だ。

欠点は「機械でも読めて」「工程から来る」

近年は、見える欠点を機械で読めるようになってきた。深層学習で生豆の欠点8種を検出した研究では精度95.2%、欠点の有無だけなら100%に達した(Huang et al., 2021)。虫害も、可視・近赤外のハイパースペクトルで精度95%・非破壊で見分けられる(Lien et al., 2020)。一方、見えない味の欠点は工程から来る。発酵にスターターを使った研究では、良い香りのマーカーと悪い香りのマーカーが特定され、たとえばグアイアコール(薬品・スモーク様)は特定の細菌が過剰に働いたときのオフフレーバーの指標になる(Martins et al., 2019)。冒頭の匂いは、まさにこれだ。過発酵まで行くと、酪酸やプロピオン酸のような酸が出て、玉ねぎ・酢のような臭いに近づく。味の欠点は、発酵を「ちょうど」で止められなかったサインでもある。

代表的なオフフレーバーと、その出どころ

よく知られたものを、出どころで並べるとこうなる。過発酵(発酵臭・アルコール・酢)は発酵の止めどきを過ぎたとき。カビ臭は乾燥や保管で水分活性が高い時間が続いたとき。フェノール・薬品様は特定の微生物の過剰や汚染。ポテト臭土っぽさは虫害や特定の細菌が関わる。白変・退色は保管・乾燥に由来する外観の欠点だ。どれも「精製・乾燥・保管のどこかで何かが起きた」記録として読める。匂いを言葉にできれば、原因の見当がつく。

欠点を、次の一年に回す

「欠点を、恥ずかしいものとして隠さない。むしろ貴重な資料であり、工程の答え合わせに使う。過発酵の臭いが出たロットは、次の年は止めどきを早める。カビが出たら、乾燥のどこで水分活性が高いまま置いたかを疑う。欠点は、来年を直すための情報だ。」

「欠点豆は、工程の答え合わせだ。隠すより、次の一年に使う。」
カッピングでコーヒーの味を確認する様子
見えない欠点は、飲んで初めて捕まる。

過発酵の化合物は過発酵臭の化合物、外観の白変は白変・退色の原因、見えない欠点を捕まえる話は見えない欠点は試飲でしか捕まらないへ。発酵を止めどきで止める話は発酵の4つの段階へ。

参考文献

NEWSLETTER

New records and lot releases, delivered to your inbox first.

LOG IN / SIGN UP日本語

BEFORE YOU GO

New lots, drying updates and field notes — every Friday, in one short letter.